『のぞみぞ』

 

 

・すでに使い古されて手垢が付きまくっている某漫才のネタを考えました。

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

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・登場人物

    ミルクボーイ駒場:ボケ担当。  
    ミルクボーイ内海:ツッコミ担当。
    鎧塚みぞれ   :オーボエ担当。
    傘木希美    :フルート担当。

     

 

 

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内海「どうもどうも~ミルクボーイです~」
駒場・内海「お願いします~ありがとうございます~」
内海「ありがとうございます~ あっ 今青い羽根をいただきましたけれどもね」
駒場・内海「ありがとうございます~」
内海「こんなんなんぼあってもいいですからね」
駒場「一番いいですからね」
内海「ね~ありがたいですよ ほんとにね」
駒場「入れておきましょう」
内海「言うとりますけれどね」
駒場「ちょっといきなりですけどね うちのオカンがね 好きな映画があるらしいんやけど」
内海「あっ そうなんや」
駒場「タイトルをちょっと忘れたらしくてね」
内海「そんなに好きでもないんか? どうなってんねんそれ」
駒場「でまあ色々聞くんやけどな 全然わからへんねんな」
内海「わからへんの? ほな俺がね オカンの好きな映画ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ」
駒場TVシリーズからのスピンオフ作品で、親友同士である女の子2人が主人公のアニメ映画やっていうねんな」
内海「お~ それは『リズと青い鳥』やないかい その特徴は完全に『リズと青い鳥』やがな」
駒場「『リズと青い鳥』なぁ」
内海「すぐわかったやん こんなん」
駒場「でもこれちょっとわからへんのやな」
内海「何がわからへんのよ~」
駒場「いや俺も『リズと青い鳥』だと思うてんけどな」
内海「いやそうやろ」
駒場「オカンが言うには、主人公二人の言動は思春期特有の一過性の感情でしかなくて、大人になるにつれてその感情は忘れ去られるべきものであり、解消していくものなんやって言うねんな」
内海「あ~ ほな『リズと青い鳥』と違うかぁ 鎧塚みぞれさんと傘木希美さんが思春期特有の一過性の感情でのぞみぞやってるわけないもんな」
駒場「そやねん」
内海「のぞみぞはね、たしかに将来は悲観的かもしれん。傘木希美さんは鎧塚みぞれさんのことを最終的には忘れてしまうんやろな。喪失は日常の一部となり、みぞれのオーボエが好きだったことを忘れてしまうかもしれへん。あるいは、鎧塚みぞれさんは傘木希美さんのことを最終的には忘れてしまうかもしれへん。というのもな、広い世界に羽ばたくことを希美に強制されたみぞれは、希美という絶対的な崇拝対象を檻に閉じ込めてしまったと思うんよ。みぞれは希美という高校のクラスメイトをその時点で永遠に閉じ込めて、希美の最後の命令を忠実に守って生きていくわけやし、高校を卒業して生きている希美はみぞれにとってはもう別の世界の希美なんよね。みぞれは希美に会わなくてもいいし、むしろ会わない方がみぞれにとって都合がええ。そうやってみぞれは過去の希美に囚われ続け、今の希美と接触を避けるようになるかもしれへん。せやけどね、それでものぞみぞには一生そのすれ違いを抱えたまま添い遂げてほしいねん」
駒場「そやねん」
内海「簡単に忘れ去られるべきものではないねん」
駒場「これは思春期特有の一過性の感情ですよ〜はい終わり、で捉えられるようなレベルの話ではないやろ。『リズと青い鳥』という作品はな」
内海「ほなもうちょっと特徴教えてくれる?」
駒場「オカンが言うには、主人公の2人はラストシーンでお互いに顔を見合わせるんやけど、その際に見せる彼女の表情を観るだけで泣いてしまうらしいねん」
内海「『リズと青い鳥』や その特徴は完全に『リズと青い鳥』やねん」
駒場「そうなんか」
内海「せやな。画面上にはみぞれの顔しか映ってはおらんけど、そのかつてない表情にわれわれは戦慄するしかあらへん。いったい希美はみぞれに何をかましたのか、これは想像するしかないんやが、この問題を考えるにあたっていったんラストシーンの状況を再現してみようや」
            

 

 

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(放課後、部活帰りの二人。)

 

 

傘木「ねえ、みぞれ 帰り、どっか寄ってく?」
鎧塚「うん」
傘木「何食べたい?」      鎧塚「かき氷」 
傘木「いいねー あ、あとパフェもいいな」
鎧塚「パンケーキ」
傘木「お、いいねー あ、でもやっぱ、渋めにお団子かなー」
鎧塚「希美」
傘木「ん?」
鎧塚「ありがとう?」
傘木「なんで疑問形なの」


傘木「みぞれ わたし、みぞれのソロ、完璧に支えるから 今は、ちょっと待ってて」
鎧塚「わたしも わたしも、オーボエ続ける」
傘木「うん」
鎧塚・傘木「本番、頑張ろう」
鎧塚「は、ハッピーアイスクリーム!」
傘木「なに、みぞれアイスが食べたいの じゃあアイスにするか 決まり!」
鎧塚「ふふっ」

 

(傘木、鎧塚と向かい合う。鎧塚、かつてない表情。)

 

 

        (disjoint⇒joint)

 

 

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駒場「希美の顔が映っていないところが憎いね」
内海「この二人はラストシーンにおいてさえも会話がかみ合ってないし徹底的にすれ違い続けているんやが、最後の最後で初めて希美はみぞれと、希美の身体はみぞれに対して半身ではあるものの、向き合っているんよ」
駒場「しかしながら希美の表情や、彼女が発した言葉、あるいは発しなかった言葉は秘匿されており、それはみぞれの表情からわれわれが推察するしかないと」
内海「その通りや。みぞれのめっちゃ驚いた表情をここで初めて観るから頭がおかしくなる」
駒場「みぞれが驚いてる場面って、序盤にもなかったっけ?」
内海「本編9分30秒あたり、朝の音楽室で希美が椅子を詰めてくるところやね。確かに驚いているけれど、どちらかというとあれは希美に対する距離感が急に近くなったことによる恐怖の感情が混じってるのとちゃうか。自分の崇拝対象がこんな偶発的に近くにいていいんですか、わたし何か間違ったことしましたか?みたいな。他にも、大好きのハグに誘われる場面とか、希美が音大受けると宣言したときにもみぞれは驚いているけれども、驚きを誘発する言動の主体は希美ではあるのだが、その言動でみぞれを驚かせよう、あるいは喜ばせようとは思っていないように感じるんだよね。対してこのラストシーンは、みぞれが希美にしてほしかったことを希美が汲み取って、意を決して振り返ったようにわれわれには観える。希美がみぞれのことを想って振り返った、その行為は中学時代の回想にて後ろから付いてくる彼女の存在を確認するためのものとは少し違う。はたまた踊り場にてターンしながら2階に上がる希美が階段の途中で彼女をひょこっと覗き見るようなものとも少し違う気がする。鎧塚みぞれさんは傘木希美さんの屈託のない笑顔が見れれば他の事なんてどうだっていいけれども、傘木希美さんにしてみれば鎧塚みぞれという存在は楽器演奏における優劣を競うライバルで、みぞれにプライドをボコボコにされて普通大学進学という道を選択させられた相手でもあり、もし彼女が自分の人生に関わらなければ違う道を歩んでいたと考えることもあるかもしれない。希美はこのまま二人の関係がdisjoint、お互いに交わることのないものとなっていけばどんなに楽であろうと思うが、既に状況は決定的に変わってしまっていた。中学の時に教室で一人ぽつんといるみぞれに声を掛けた瞬間から、希美は自分の人生に鎧塚みぞれという存在を勝手に取り込み、自身の優越性を確認するためための手段として利用してきたんだ。吹奏楽だけでなく、人間関係においてもみぞれを囲い込んだ。そんな奴がこのザマだ。今じゃみぞれには希美以外の親友や優秀な講師が周りを取り囲んでいるし、その事実に嫉妬の感情を覚えるようになった。みぞれを手放したくない。なにがdisjointだ。私はみぞれがいないと生きていけないんじゃないだろうか。

 

鎧塚「は、ハッピーアイスクリーム!」
傘木「なに、みぞれアイスが食べたいの じゃあアイスにするか 決まり!」
鎧塚「ふふっ」

 


(傘木希美、鎧塚みぞれの前を歩きながら考える。)

 


 ≪みぞれは、私の全部が好き、と言ってくれたけれど、こうして二人で歩くだけでも、みぞれにとっては幸福な時間なんだよね≫

 ≪そんなこと思ってもみなかった。だって、私がみぞれに与えられるものなんて何もなかったから≫

 ≪私はずるい人間だ≫

 ≪今も分からないふりをしているだけなんだ≫

 ≪みぞれと、ちゃんと向き合おう≫

 ≪私はこれから、みぞれにとって価値のあるものを与えていけるのだろうか≫

 

(傘木、鎧塚と向かい合う。)

 

傘木「わたしのおごりね!」

 

(鎧塚、かつてない表情。)

 

 

        (disjoint⇒joint)

 

 

 

 

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駒場「希美の最後の台詞について監督は、観客の想像に委ねると仰られていたけれども、このみぞれの表情を鑑みる限り、のぞみぞがこの一瞬だけでも添い遂げてほしいという祈りのようなものを感じとることができるねんな」
内海「こんなん絶対『リズと青い鳥』に決まりやんか!この映画が『リズと青い鳥』じゃなかったらいままで俺が繰り返し観てきた『リズと青い鳥』って全部俺の妄想の中にしか存在しないんか?」
駒場「でもまだわからへんねん」
内海「何がわからへんのよ!」
駒場「おれもオカンが言うてる映画は『リズと青い鳥』でほぼ決まりだと思ってるねんけど、いまひとつわからへんねん」
内海「だから、何がわからへんねん」
駒場「オカンが言うには、二人は最終的に学園という檻から脱出して幸せなキスをするらしいねん」
内海「ほな『リズと青い鳥』ちゃうやんけ!のぞみぞは確かにラストシーンで初めて学園の外に出たけれど、未だに二人の関係性は吹奏楽コンクールに縛られている危ういものにすぎないし、彼女らが本当に学園を旅立つときを想像するとしても幸せなキスをするまでに至っているかというとこれは難しいと思うんよ」
駒場「二人には添い遂げてほしいって言うてたやん」
内海「言うたよ。だけどな、そんな簡単な話ではないねん。のぞみぞを安易に幸せなキスでハッピーエンドにしてしもうたらいかんねん、この映画が描写した二人の関係にはな。物語はハッピーエンドがいいけど、現実はそう上手くいかないからこそ輝くねん」
駒場「のぞみぞを物語にしたくないと」
内海「確かに『リズと青い鳥』は物語だけれども、虚構内存在としての傘木希美さんと鎧塚みぞれさんには違う形での確執が残り続けていると思うんよ。ほなもうちょっと何か言うてなかったか?」
駒場「卵が重要なモチーフだって言うてたな」
内海「味ついてておいしいです、といえば『リズと青い鳥』やないかい!傘木希美が受け取った卵はな、お前はこのままじゃ一生はばたけんでっちゅうメタファーなんよ。こんなん『リズと青い鳥』で決まりやんか」
駒場「でもまだわからへんねん」
内海「わからへんことない お前のオカンが好きな映画は『リズと青い鳥』や」
駒場「でもオカンが言うには、『リズと青い鳥』ではないって言うねん」
内海「ほな『リズと青い鳥』ちゃうやないかい!オカンが『リズと青い鳥』ちゃうっていうんやから、『リズと青い鳥』ちゃうがな」
駒場「そやねん」
内海「先に言うてくれよ!俺が今まで『リズと青い鳥』の妄想を垂れ流しているあいだお前はいったいどんな顔して聞いてたんや」
駒場「申し訳ないとは思っている」
内海「ホンマにわからへんがな、これ」
駒場「そんでオトンが言うにはな」
内海「オトン?」


              卵の殻を破らねば、

              雛鳥は生まれずに死んでいく。

      雛は我らだ。

      卵は世界だ。

              世界の殻を破らねば、

              我らは生まれずに死んでいく。

      世界の殻を破壊せよ。

      世界を革命するために!

 

 

 


  世界を革命する力をーーーーーーーーー!
       

 

 

          

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                 ウテナ・カー

           

 

 

 

 

 

 

内海「『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』やんけ もうええわ」
内海・駒場「ありがとうございました~」




 

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・参照

https://entamerush.jp/6280/

https://ityou.hatenablog.com/entry/2019/07/14/142606

https://ityou.hatenablog.com/entry/20180610

https://zunguri-69riz.hatenablog.com/entry/2018/05/16/233005