『のぞみぞ』

 

 

・すでに使い古されて手垢が付きまくっている某漫才のネタを考えました。

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

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・登場人物

    ミルクボーイ駒場:ボケ担当。  
    ミルクボーイ内海:ツッコミ担当。
    鎧塚みぞれ   :オーボエ担当。
    傘木希美    :フルート担当。

     

 

 

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内海「どうもどうも~ミルクボーイです~」
駒場・内海「お願いします~ありがとうございます~」
内海「ありがとうございます~ あっ 今青い羽根をいただきましたけれどもね」
駒場・内海「ありがとうございます~」
内海「こんなんなんぼあってもいいですからね」
駒場「一番いいですからね」
内海「ね~ありがたいですよ ほんとにね」
駒場「入れておきましょう」
内海「言うとりますけれどね」
駒場「ちょっといきなりですけどね うちのオカンがね 好きな映画があるらしいんやけど」
内海「あっ そうなんや」
駒場「タイトルをちょっと忘れたらしくてね」
内海「そんなに好きでもないんか? どうなってんねんそれ」
駒場「でまあ色々聞くんやけどな 全然わからへんねんな」
内海「わからへんの? ほな俺がね オカンの好きな映画ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ」
駒場TVシリーズからのスピンオフ作品で、親友同士である女の子2人が主人公のアニメ映画やっていうねんな」
内海「お~ それは『リズと青い鳥』やないかい その特徴は完全に『リズと青い鳥』やがな」
駒場「『リズと青い鳥』なぁ」
内海「すぐわかったやん こんなん」
駒場「でもこれちょっとわからへんのやな」
内海「何がわからへんのよ~」
駒場「いや俺も『リズと青い鳥』だと思うてんけどな」
内海「いやそうやろ」
駒場「オカンが言うには、主人公二人の言動は思春期特有の一過性の感情でしかなくて、大人になるにつれてその感情は忘れ去られるべきものであり、解消していくものなんやって言うねんな」
内海「あ~ ほな『リズと青い鳥』と違うかぁ 鎧塚みぞれさんと傘木希美さんが思春期特有の一過性の感情でのぞみぞやってるわけないもんな」
駒場「そやねん」
内海「のぞみぞはね、たしかに将来は悲観的かもしれん。傘木希美さんは鎧塚みぞれさんのことを最終的には忘れてしまうんやろな。喪失は日常の一部となり、みぞれのオーボエが好きだったことを忘れてしまうかもしれへん。あるいは、鎧塚みぞれさんは傘木希美さんのことを最終的には忘れてしまうかもしれへん。というのもな、広い世界に羽ばたくことを希美に強制されたみぞれは、希美という絶対的な崇拝対象を檻に閉じ込めてしまったと思うんよ。みぞれは希美という高校のクラスメイトをその時点で永遠に閉じ込めて、希美の最後の命令を忠実に守って生きていくわけやし、高校を卒業して生きている希美はみぞれにとってはもう別の世界の希美なんよね。みぞれは希美に会わなくてもいいし、むしろ会わない方がみぞれにとって都合がええ。そうやってみぞれは過去の希美に囚われ続け、今の希美と接触を避けるようになるかもしれへん。せやけどね、それでものぞみぞには一生そのすれ違いを抱えたまま添い遂げてほしいねん」
駒場「そやねん」
内海「簡単に忘れ去られるべきものではないねん」
駒場「これは思春期特有の一過性の感情ですよ〜はい終わり、で捉えられるようなレベルの話ではないやろ。『リズと青い鳥』という作品はな」
内海「ほなもうちょっと特徴教えてくれる?」
駒場「オカンが言うには、主人公の2人はラストシーンでお互いに顔を見合わせるんやけど、その際に見せる彼女の表情を観るだけで泣いてしまうらしいねん」
内海「『リズと青い鳥』や その特徴は完全に『リズと青い鳥』やねん」
駒場「そうなんか」
内海「せやな。画面上にはみぞれの顔しか映ってはおらんけど、そのかつてない表情にわれわれは戦慄するしかあらへん。いったい希美はみぞれに何をかましたのか、これは想像するしかないんやが、この問題を考えるにあたっていったんラストシーンの状況を再現してみようや」
            

 

 

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(放課後、部活帰りの二人。)

 

 

傘木「ねえ、みぞれ 帰り、どっか寄ってく?」
鎧塚「うん」
傘木「何食べたい?」      鎧塚「かき氷」 
傘木「いいねー あ、あとパフェもいいな」
鎧塚「パンケーキ」
傘木「お、いいねー あ、でもやっぱ、渋めにお団子かなー」
鎧塚「希美」
傘木「ん?」
鎧塚「ありがとう?」
傘木「なんで疑問形なの」


傘木「みぞれ わたし、みぞれのソロ、完璧に支えるから 今は、ちょっと待ってて」
鎧塚「わたしも わたしも、オーボエ続ける」
傘木「うん」
鎧塚・傘木「本番、頑張ろう」
鎧塚「は、ハッピーアイスクリーム!」
傘木「なに、みぞれアイスが食べたいの じゃあアイスにするか 決まり!」
鎧塚「ふふっ」

 

(傘木、鎧塚と向かい合う。鎧塚、かつてない表情。)

 

 

        (disjoint⇒joint)

 

 

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駒場「希美の顔が映っていないところが憎いね」
内海「この二人はラストシーンにおいてさえも会話がかみ合ってないし徹底的にすれ違い続けているんやが、最後の最後で初めて希美はみぞれと、希美の身体はみぞれに対して半身ではあるものの、向き合っているんよ」
駒場「しかしながら希美の表情や、彼女が発した言葉、あるいは発しなかった言葉は秘匿されており、それはみぞれの表情からわれわれが推察するしかないと」
内海「その通りや。みぞれのめっちゃ驚いた表情をここで初めて観るから頭がおかしくなる」
駒場「みぞれが驚いてる場面って、序盤にもなかったっけ?」
内海「本編9分30秒あたり、朝の音楽室で希美が椅子を詰めてくるところやね。確かに驚いているけれど、どちらかというとあれは希美に対する距離感が急に近くなったことによる恐怖の感情が混じってるのとちゃうか。自分の崇拝対象がこんな偶発的に近くにいていいんですか、わたし何か間違ったことしましたか?みたいな。他にも、大好きのハグに誘われる場面とか、希美が音大受けると宣言したときにもみぞれは驚いているけれども、驚きを誘発する言動の主体は希美ではあるのだが、その言動でみぞれを驚かせよう、あるいは喜ばせようとは思っていないように感じるんだよね。対してこのラストシーンは、みぞれが希美にしてほしかったことを希美が汲み取って、意を決して振り返ったようにわれわれには観える。希美がみぞれのことを想って振り返った、その行為は中学時代の回想にて後ろから付いてくる彼女の存在を確認するためのものとは少し違う。はたまた踊り場にてターンしながら2階に上がる希美が階段の途中で彼女をひょこっと覗き見るようなものとも少し違う気がする。鎧塚みぞれさんは傘木希美さんの屈託のない笑顔が見れれば他の事なんてどうだっていいけれども、傘木希美さんにしてみれば鎧塚みぞれという存在は楽器演奏における優劣を競うライバルで、みぞれにプライドをボコボコにされて普通大学進学という道を選択させられた相手でもあり、もし彼女が自分の人生に関わらなければ違う道を歩んでいたと考えることもあるかもしれない。希美はこのまま二人の関係がdisjoint、お互いに交わることのないものとなっていけばどんなに楽であろうと思うが、既に状況は決定的に変わってしまっていた。中学の時に教室で一人ぽつんといるみぞれに声を掛けた瞬間から、希美は自分の人生に鎧塚みぞれという存在を勝手に取り込み、自身の優越性を確認するためための手段として利用してきたんだ。吹奏楽だけでなく、人間関係においてもみぞれを囲い込んだ。そんな奴がこのザマだ。今じゃみぞれには希美以外の親友や優秀な講師が周りを取り囲んでいるし、その事実に嫉妬の感情を覚えるようになった。みぞれを手放したくない。なにがdisjointだ。私はみぞれがいないと生きていけないんじゃないだろうか。

 

鎧塚「は、ハッピーアイスクリーム!」
傘木「なに、みぞれアイスが食べたいの じゃあアイスにするか 決まり!」
鎧塚「ふふっ」

 


(傘木希美、鎧塚みぞれの前を歩きながら考える。)

 


 ≪みぞれは、私の全部が好き、と言ってくれたけれど、こうして二人で歩くだけでも、みぞれにとっては幸福な時間なんだよね≫

 ≪そんなこと思ってもみなかった。だって、私がみぞれに与えられるものなんて何もなかったから≫

 ≪私はずるい人間だ≫

 ≪今も分からないふりをしているだけなんだ≫

 ≪みぞれと、ちゃんと向き合おう≫

 ≪私はこれから、みぞれにとって価値のあるものを与えていけるのだろうか≫

 

(傘木、鎧塚と向かい合う。)

 

傘木「わたしのおごりね!」

 

(鎧塚、かつてない表情。)

 

 

        (disjoint⇒joint)

 

 

 

 

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駒場「希美の最後の台詞について監督は、観客の想像に委ねると仰られていたけれども、このみぞれの表情を鑑みる限り、のぞみぞがこの一瞬だけでも添い遂げてほしいという祈りのようなものを感じとることができるねんな」
内海「こんなん絶対『リズと青い鳥』に決まりやんか!この映画が『リズと青い鳥』じゃなかったらいままで俺が繰り返し観てきた『リズと青い鳥』って全部俺の妄想の中にしか存在しないんか?」
駒場「でもまだわからへんねん」
内海「何がわからへんのよ!」
駒場「おれもオカンが言うてる映画は『リズと青い鳥』でほぼ決まりだと思ってるねんけど、いまひとつわからへんねん」
内海「だから、何がわからへんねん」
駒場「オカンが言うには、二人は最終的に学園という檻から脱出して幸せなキスをするらしいねん」
内海「ほな『リズと青い鳥』ちゃうやんけ!のぞみぞは確かにラストシーンで初めて学園の外に出たけれど、未だに二人の関係性は吹奏楽コンクールに縛られている危ういものにすぎないし、彼女らが本当に学園を旅立つときを想像するとしても幸せなキスをするまでに至っているかというとこれは難しいと思うんよ」
駒場「二人には添い遂げてほしいって言うてたやん」
内海「言うたよ。だけどな、そんな簡単な話ではないねん。のぞみぞを安易に幸せなキスでハッピーエンドにしてしもうたらいかんねん、この映画が描写した二人の関係にはな。物語はハッピーエンドがいいけど、現実はそう上手くいかないからこそ輝くねん」
駒場「のぞみぞを物語にしたくないと」
内海「確かに『リズと青い鳥』は物語だけれども、虚構内存在としての傘木希美さんと鎧塚みぞれさんには違う形での確執が残り続けていると思うんよ。ほなもうちょっと何か言うてなかったか?」
駒場「卵が重要なモチーフだって言うてたな」
内海「味ついてておいしいです、といえば『リズと青い鳥』やないかい!傘木希美が受け取った卵はな、お前はこのままじゃ一生はばたけんでっちゅうメタファーなんよ。こんなん『リズと青い鳥』で決まりやんか」
駒場「でもまだわからへんねん」
内海「わからへんことない お前のオカンが好きな映画は『リズと青い鳥』や」
駒場「でもオカンが言うには、『リズと青い鳥』ではないって言うねん」
内海「ほな『リズと青い鳥』ちゃうやないかい!オカンが『リズと青い鳥』ちゃうっていうんやから、『リズと青い鳥』ちゃうがな」
駒場「そやねん」
内海「先に言うてくれよ!俺が今まで『リズと青い鳥』の妄想を垂れ流しているあいだお前はいったいどんな顔して聞いてたんや」
駒場「申し訳ないとは思っている」
内海「ホンマにわからへんがな、これ」
駒場「そんでオトンが言うにはな」
内海「オトン?」


              卵の殻を破らねば、

              雛鳥は生まれずに死んでいく。

      雛は我らだ。

      卵は世界だ。

              世界の殻を破らねば、

              我らは生まれずに死んでいく。

      世界の殻を破壊せよ。

      世界を革命するために!

 

 

 


  世界を革命する力をーーーーーーーーー!
       

 

 

          

        ⇓  

 

 

 

     

                 ウテナ・カー

           

 

 

 

 

 

 

内海「『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』やんけ もうええわ」
内海・駒場「ありがとうございました~」




 

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・参照

https://entamerush.jp/6280/

https://ityou.hatenablog.com/entry/2019/07/14/142606

https://ityou.hatenablog.com/entry/20180610

https://zunguri-69riz.hatenablog.com/entry/2018/05/16/233005

好きなアルバム100枚(前編)

・私の好きなアルバムは、アルバムの良さに加え個人的な体験談も伴う。当時のつらい状況を思い出すため聴かなくなったものもある。リスト作成に至った経緯は、あまり当時のことを思い出せなくなってきたからで、自分が好きなアルバムを列挙すればそれが何だったのか分かる気がした。毎日が通り過ぎていく中でずるずると暗い気分になる私を励ましてくれたのは音楽だと思う。

 

 

 

 

・というわけでとりあえずのベストっぽいものを挙げてみた。貧弱極まる音楽遍歴なので批評とか高尚なものは全くなく、すべてただの個人的感想になります。それってあなたの感想ですよね?そうです、だたの感想です。ただ感想を述べるだけで叩かれる世の中ってポイズンだけれど、それでも書かなければ何もなかったことと同じになるのでみなさんもじゃんじゃん感想を書いてほしい。なんでも。

 

 

 

 

・リストは順不同ですが、後半になるにつれ思い入れ度が増す気がします。

 

 

 

 

 

 

・1.Kanye West/My Beautiful Dark Twisted Fantasy(2010)

・2010年代の傑作のひとつであり、大物ラッパーの絶頂期に相応しい5th。現在進行形で物議を醸しているカニエだけれども、私は人格と作品の価値は別物だと考えている。大学の卒論提出〆切を過ぎ留年が確定した日に聴いて文字通り椅子からひっくり返った記憶がある。

 

 

 

 

・2.My Little Lover/evergreen(1995)

 ・小林武史プロデュースの1st。コバタケのアレンジは大仰だと時折批判を受けるが、このアルバムについてはボーカルの歌声と完璧に合致しており、彼の最良の仕事のひとつ。就職して1年目の車内でよく聴いた。

 

 

 

 

・3.Nujabes/Modal Soul(2005)
Nujabes

・北海道に車で4泊5日の旅行に行ったとき、小樽市から国道5号線を通りニセコ町長万部町を通過して函館まで帰る際の山道でこのアルバムを延々と聴いていた。夜通し運転していたので気がおかしくなりそうだったが無事に戻れたので良かった。

 

 

 

・4.King Crimson/In the Court of the Crimson King(1969)

In the Court.. -Box Set-

プログレッシブロックの金字塔。このジャンルは今でこそ聴かなくなってしまったが、大学生の頃は熱心なリスナーであった。手数の多いドラムトラックと省察的な歌詞に驚いたものだった。公務員試験の勉強をしているときに筋肉少女帯と合わせてよく聴いていた。

 

 

 

 

・5.Los Campesinos!/Hold On Now, Youngster...(2008)

HOLD ON NOW, YOUNGSTER... (REMASTERED EDITION)

・男女混合7人組のお祭りバンド1st。存在しない青春を幻視させるような、圧倒的な輝きと儚さがこのアルバムには詰まっている。青春とは失われることが予め合意されている祝祭だと思う。

 

 

 

 

・6.The Strokes/Is This It(2001)

Is This It (International Pressing)

・2度目の就職活動のため、東京に行く新幹線の中で履歴書を書きながら聴いていたことを覚えている。追い詰められた時に聴くガレージロックは私にどうにもならないことは諦めるのが大事だと教えてくれた。

 

 

 

 

・7.大森靖子/MUTEKI(2017)

MUTEKI

・女性SSWの弾き語りアルバム。ギターの弾き語りで彼女が真価を発揮するのは当然というか、暗い情念を自身のセルフブランディングも顧みず歌う様には畏敬すら感じる。

 

 

 

 

・8.相対性理論/ハイファイ新書(2009)

四角革命

・ボーカルやくしまるえつこの無機質な歌声と、後続の作品には無い演奏陣の質の高さで知名度を上げたバンドの1st。「さわやか会社員」の完璧なギターソロの前では感服する他はない。中学生の頃から今でも聴き続けている。僕のipodに曲を入れてくれた清水くん、ありがとう!

 

 

 

 

・9.The Beach Boys/Pet Sounds(1966)

ペット・サウンズ(MONO & STEREO)+1(SHM-CD)

・天才ブライアン・ウィルソンの英知が結集した傑作。とりあえずペットサウンズ流すかと聴き始めればアルバムの最後まで聴いてしまう不思議な力を持つ。大学3年の頃によく聴いていた。

 

 

 

・10.Modest Mouse/Good News For People Who Love Bad News(2004)

フロート・オン

・Vampire Weekend「Step」の歌詞に登場したためにこのバンドに興味を持ち、渋谷ツタヤでCDを借りた記憶がある。バンド名の元ネタは確かヴァージニア・ウルフの小説。大学を留年し路頭に迷っていたころだったので暇を持て余しており、とにかく何か聴いてないと気が休まらなかった。哀愁漂うサウンドが何とも言えない。

 

 

 

 

・11.THE BLUE HEARTS/THE BLUE HEARTS(1987)

THE BLUE HEARTS

・大学3年の頃は研究室に所属し色々やっていたが、ブルーハーツが好きな人がいて薦められた。哲学徒たるもの甲本並みの気合で世間に逆張りしていけというつもりだったかもしれない。だが甲本ヒロトは自身をコントロールする術を心得ていた。逆張りに憧れる年頃ではあったが、まずは足元を固めないと話にもならないことが判った。

 

 

 

 

 

・12.Death Grips/The Money Store(2012)

The Money Store

・Pichforkから絶賛を受けたHiphopユニットの1st。異様なリリックとエレクトロサウンドが融合された音楽はダンスフロアで流すには殺伐過ぎる感はあるが同時に心地よさも感じられる。チェンソーマンを読んでるときの脳内BGMはこのアルバム。

 

 

 

 

・13.Phoenix/Wolfgang Amadeus Phoenix(2009)

Wolfgang Amadeus Phoenix

・仏出身4人組ロックバンドの4th。何といっても「1901」の軽快なサウンドと歌詞には何度も勇気づけられた。アルバム単体では構成に難があるが、それもこの1曲でカバーできるため今回取り上げた。就職してからよく聴いたと思う。確かMVもあるが祝祭感がありとても良い。

 

 

 

 

・14.Radiohead/Kid A(2000)

Kid A [国内盤 / 解説・日本語歌詞付] (XLCDJP782)

・この1枚でロックの歴史を変えた大物バンドの4th。巧みな構成力とサウンドの美しさは他の追随を許さないが、感情としてはフラットな気分で聴けるため試験勉強のお供によく聴いていた。

 

 

 

 

・15.くるり/TEAM ROCK(2001)

TEAM ROCK

岸田繁を中心として流動的な編成を行うバンドの3rd。「ばらの花」は邦楽史に残る名曲である。ジンジャーエールを飲みながらよく聴いていた夏を思い出す。

 

 

 

 

・16.レミオロメン/ether(2005)

ether[エーテル]

・「粉雪」で有名なスリーピースバンドの2nd。アップテンポの曲で突き抜けるこのアルバムは、人をして春夏秋冬全季節に呼応する1枚と言わしめた。快晴のビーナスラインを爆走しながら聴きたい。実際は家と職場の往復で聴くだけだったが…

 

 

 

 

 

・17.Silvanian Families/Individual Four and Alpha Stars(2012)

・長谷川白紙、パソコン音楽クラブを輩出したネットレーベルMaltine Recordsからリリース。豊富な声ネタに加え混沌としたボーカルチョップの中で刻まれる音楽は、一種の同人音楽の域を凌駕している。無理やりにでも気分を上げたいときに聴く。

 

 

 

 

・18.The National/Boxer(2007)
Boxer [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤CD] (BBQ252CDJP)

Wilcoと並ぶアメリカの良心を担うロックバンドの4th。アルバムの統一度もさることながら、リードトラック「Fake Empire」の歌詞がとてつもなく良い。微睡みの中の偽りの王国。すべてを一度に分かろうとしていた時期もあったが、年を重ねることは悪いことばかりでもないだろう。

 

 

 

 

・19.Big Thief/Dragon New Warm Mountain I Believe in You(2022)

Dragon New Warm Mountain I Believe in You [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲追加収録 / 国内盤 / 2CD] (4AD0408CDJP)

・USインディーロックの最先端を突っ走っているバンドの新作。2枚組というボリュームながらも、アルバム全体の流れを阻害する要素が何一つなく素晴らしい。まだまだ聴き込んでないけれども途轍もない傑作であることは確かだと思う。このような作品が世に出て来るというのは本当に祝福されるべきことなんだろうな。

 

 

 

 

・20.Rostam/Half-light(2017)
Half

・Vampire Weekendから離脱した後のソロ1st。前所属バンドの核となっていたメロディメイカーとしての才能を遺憾なく発揮している。I belive I will see you againと歌い少しの後悔は滲ませつつも前向きな曲も多く、聴くと晴れやかな気持ちになる。

 

 

 

 

・21.ROTH BART BARON/けものたちの名前(2019)
けものたちの名前

・このアルバムを聴くと冬の寒さを思い出す。淡々としたピアノに乗せられて描写される情景は、神様のいない12月のような覚束なさと新年を迎える前のあの浮ついた不安とも焦燥ともわからない感覚に的確に当てはまる。

 

 

 

 

・22.Keith Jarrett/The Melody At Night, With You(1999)
メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー

・最初の曲の1音を聴くだけで、夜のためにあるアルバムだと確信できる静謐さがある。仕事が嫌で眠れない日曜の夜に聴く。眠れない夜には手放せない。

 

 

 

 

・23.The Beatles/Magical Mystery Tour(1967)
マジカル・ミステリー・ツアー

・大学5年生の頃、青春18きっぷで松本から長崎まで旅行に行った。佐世保から長崎までの鈍行でストロベリーフィールズフォーエバーを聴きながら外の景色を眺めていた。朴訥と広がる田園風景のなか、ポールが見ていた故郷の風景はどのようなものなのだろうかと思いを馳せた。きっと快晴ではないだろうが、苺畑というものは見たことがないため想像することしかできない。だがそれを見ている者の感情は理解できる気がした。永遠に続くものなどありはしないのだ。きっとそういう気持ちだったと思う。

 

 

 

 

 

・24.Bob Dylan/Highway 61 Revisited(1965)
追憶のハイウェイ61

ノーベル文学賞受賞者の6th。若干24歳で「ライクアローリングストーン」を書き上げた、掠れた声の歌手は現在も活動を続けている。村上春樹の小説(世界の終りと…)では終盤にディランの曲が効果的に使われており、それは私の好きなシーンでもある。

 

 

 

 

 

・25.羊文学/トンネルを抜けたら(2017)
トンネルを抜けたら

・塩塚モエカ率いるスリーピースバンドの1stEP。演奏時間は短いながらも、自意識と向き合った真摯な歌詞と粗削りながらもぐいぐいと引き込まれるサウンドに魅了される。このバンドに関しては「ざわめき」以降のアルバムはすっかり牙が抜け落ちてしまったなあという感想を持っていて残念な気持ちがある。休日の運転中によく聴いた。

 

 

 

 

・26.宇多田ヒカル/Fantome(2016)
Fantôme (生産限定盤)(2枚組)(特典:なし)[Analog]

・作品を発表する毎に音楽性が洗練されていく女性SSWの6th。エヴァQのテーマソング「桜流し」を筆頭に、KOHHを客演に迎えた鬼気迫る「忘却」や小袋成彬とコラボした「ともだち」など顔ぶれが豪華。卒論〆切を目前に聴きまくって現実逃避していた記憶が蘇ってくる。

 

 

 

 

・27.昆虫キッズ/My Final Fantasy(2009)
MY FINAL FANTASY

・変態フロントマンこと高橋翔率いるロックバンドの1st。彼ら/彼女らのライブ映像を観ていると、ここではないどこかへ行きたいという感情が沸き上がってくる。いつか誰とも会わない日々を夢見るとき、我々はサリンジャーのように沈黙するしか手段はないのだろうか。死ぬほど落ち込んでるときに聴くと良いカンフル剤になる。

 

 

 

 

・28.Sons Of Kemet/Your Queen Is A Reptile(2018)
Your Queen Is A Reptile

・英国のジャズグループによる3rdアルバム。ジャズのことは何一つ知らないが初めて聴いたときには文字通り椅子からひっくり返った。タイトルから調べるとどうやらReptillian conspiracy theory(歴代の英国女王は王冠を被った爬虫類だという陰謀論の一種)なる怪しさ満載の思想から着想を得ているらしいが…。しかしながら、その暴力的なまでのグルーヴには感嘆するしかない。

 

 

 

 

 

・29.King Krule/The OOZ(2017)
Ooz

・英国出身SSWの終始ダウナーを貫く3rd。ダウナーとは言ったものの、ダブステップやジャズの要素を取り込んだ楽曲は情感豊かであり、ある意味では希望を感じる。ジャケットの飛行機雲がとてつもなく良い。私は飛行機雲を見るだけでテンションが上がってしまう。

 

 

 

 

・30.上海アリス幻樂団/大空魔術~Magical Astronomy~(2006)
大空魔術~Magical Astronomy/上海アリス幻樂団

東方Projectを知るきっかけは、研究室同期の女の子が東方好きでチルノの絵を描いてくれたからだったと思う。その女の子は卒業したが私は留年し、暇を持て余していたところ原作に触れてやり込んだ。秘封倶楽部についてはキャラ名なら知っていたが、ZUN氏の音楽CDに付属しているテキストが元ネタとのことで早速聴いた。短調からなる、何かに追われているような焦燥感溢れる音楽はゲーム上のみならず、当時の引き延ばされた生活を一瞬でも忘れさせてくれた。もうあの頃の生活には戻りたくない。

 

 

 

 

・31.チャットモンチー/告白(2009)
告白

・高校生の頃、部活帰りの電車の中や大会に行くバスの中でよく聴いていた。あの頃はまだ若く、いつかは自分もいっぱしの何者かになれるような気がしていたが、いまも何者かになれているような気はしていない。

 

 

 

 

・32.Arcade Fire/Funeral(2004)
フューネラル(紙ジャケット仕様)

・カナダ出身多人数バンドの1st。2000年代のインディーシーンを席巻した1枚。ラストを飾る曲(in the backsheet)は大人になるという重荷を背負う覚悟を感じる歌詞だが、後部座席から運転席へ移っても自動的に大人になるわけではない。強制はあくまでも機会にすぎず、自発的な動機が必要だと今回聴いてみて思った。

 

 

 

 

・33.筋肉少女帯/キラキラと輝くもの(1996)
キラキラと輝くもの+6

サブカルの代弁者大槻ケンヂ率いるバンドの1枚。小説家でもある彼の物語性の強い歌詞はさらっと聴き流せるものではない。私も公務員試験のために図書館に入り浸っていたとき、筋少の曲がかかると手を止めていた気がする。

 

 

 

 

・34.Bruce Springsteen/Born To Run(1975)
明日なき暴走(REMASTER)

・USを代表するSSWの3rd。ほとんど聴き取れない唄と熱いブルースで突き抜けるこのアルバムは、ストリートチルドレンでなくともその脱出願望を感じるに余りある。洋楽を聴き始めたのは大学3年に入ってからだと思うが、各年代の名盤からツタヤでCDを借りまくっていた。未来があっていい時代だった。

 

 

 

 

・35.JPEGMAFIA/All My Heroes Are Cornballs(2019)
JPEGMAFIA TYPE BEAT [Explicit]

・コラージュを散りばめたトラックメイクと元軍人のラッパーによる混沌としたリリックが特徴の3rdアルバム。継ぎ接ぎの音楽の中で悲痛な叫びが反響され、呪術的な妖しさを醸し出している。

 

 

 

 

 

・36.kurayamisaka/kimi wo omotte iru(2022)
kimi wo omotte iru

・ネット上に突如現れた東京出身オルタナロックバンドの1st mini。「高校を卒業し離れ離れになる親友への追憶」というコンセプトのもと、潔いギターロックで突き進む20分。リズと青い鳥

 

 

 

 

 

・37.ゆらゆら帝国/空洞です(2007)
空洞です

・リリース後にバンド自体が解散する、幕引きに相応しいラストアルバム。大学生の頃、哲学科の先輩にゆらゆら帝国が好きな女の子がいて(なんでこんな学科にいるの…と思うくらい素敵な人だった)そこからこのバンドの作品を聴き始めたと思う。その人のことはかなり好きで、研究室でゆるゆり一期OPの話をしたりラブライブ!で推しは誰かの話をしたり飲み会で一緒に後輩をいじりながらテーブルの下で足をつつきあったりしていた。帰り道で彼女は僕のことを女装したらきっと似合うと思うから女装してみるのに付き合ってもいいよみたいなことを言って笑ったが、僕は冗談だと思ってまたいつかと曖昧な返事をした。市役所職員を目指していて、偶然公務員試験の勉強を一緒になってやったことを覚えている。僕は大学に行かなくなり結局は地元に戻ったが、伝え聞くところによると彼女は大学の指導教授と結婚し幸せな生活を送っているらしい。

 

 

 

 

 

・38.Neutral Milk Hotel/In the Aerophane over the Sea(1998)
In the Aeroplane over the Sea by Neutral Milk Hotel (1998-02-10)

・Pitchforkの最重要アルバムに名を連ねるカルト的な人気を持つUSインディの傑作。アンネの日記から着想を得た名曲「Holland,1945」を筆頭に、60年代のサイケデリック感を出しつつなお現代でも通用するエモーショナルなサウンドを奏でている。

 

 

 

 

 

・39.麓健一/コロニー(2011)
コロニー

・孤高のサウンドを奏でる男性SSWの2nd。前作の教会から鳴らされているような籠った音響は影を潜め、宅録的なミニマルさと厭世感が強く表出されている。

 

 

 

 

・40.Pixies/Doolittle(1989)
Doolittle [輸入アナログ盤] (CAD905) [12 inch Analog]

ニルヴァーナナンバーガールに多大な影響を与えたことで知られる、時代を先取りしたバンドの2nd。躁鬱的な歌唱と唯一無二のベースによるサウンドの躍動感は今聴いてもテンションがブチ上がること間違いなし。試験勉強中によく聴いた。

 

 

 

 

・41.INU/メシ喰うな(1981)
メシ喰うな

町田康のパンクバンド時代唯一のアルバム。ギターサウンドの妙が光る。私は時々食事を忘れることがあるが、たまに表題曲を思い出しては一人でニヤニヤしていることがある。どういうこと?

 

 

 

 

・42.ナツノムジナ/淼のすみか(2017)

淼のすみか

・寡作な沖縄出身オルタナロックバンドの1st。叙事的な難解極まる歌詞に合わせ誠実にギターを掻き鳴らすこのアルバムは、構成力の巧みさに加え様々な趣向が凝らされており2010年代邦楽ロックの中でも最良のものだと思う。変奏されるリフの数々が聴くたびに新鮮な驚きを与えてくれる。

 

 

 

 

・43.<物語>シリーズ/歌物語-<物語シリーズ主題歌集>-(2016)
歌物語-〈物語〉シリーズ主題歌集- (完全生産限定盤)

西尾維新についてはデビュー作クビキリサイクルからのファンであるが、アニメは大学1年になってからリアルタイムで物語セカンドシーズンをニコ動で観ていた。乾燥した暮らしにおける一つのオアシスとなってくれた。羽川翼さんが好きです。

 

 

 

 

・44.Chance The Rapper/Acid Rap(2013)
Acid Rap

・大物ラッパーのキーボードサウンドが特徴的な2nd Mixtape。就職も決まらず実家で鬱々と過ごしていた時期によく聴いていた。あの頃はとにかく何もしたくないという思いが強く、身動きがとれない状態が続いておりそこから自由になる術を音楽に求めていたように思う。

 

 

 

 

・45.明日の叙景/アイランド(2022)
アイランド

・2014年結成のポストブラックメタルバンド(と書いてもどういうジャンルなのかよく知らない)の2nd。ヒロイン/世界の二項関係で葛藤する夏を想起させるゼロ年代セカイ系のテイストを取り入れながら、メタルの文脈でエモいメロディを奏でるため訳が分からないことになっている。イリヤの空、UFOの夏。唸るような歌唱の中、空に飛び立ってゆくイリヤを見届ける。終わる、のではない。終わらせるのだ。この夏を終わらせる怪作。

 

 

 

 

・46.James Blake/James Blake(2011)
James Blake [12 inch Analog]

ダブステップを革新したUK出身SSWの1st。内省的ではあるが、聴き込むほどに魅力を感じていく。車中で聴くのはおすすめしない。

 

 

 

 

 

・47.OTAKU-ELITE Recordings/Opium and Purple haze(2014)

・東方同人サークルIOSYSのメンバー、D.Watt(七条レタス)作曲のEP。表題曲は地霊殿3面ボスさとり曲のアレンジであり、一貫して硬派なEDMだが各パートの洗練されたトラックメイクには息を吞むしかない。サウンドボルテックスという音楽ゲームが好きで、譜面も曲も同ゲームの中では一番好きである。松戸譜面ばっかりやってるなこいつ。

 

 

 

 

・48.Talking Heads/Remain In Light(1980)
Remain in Light

・痙攣的なフロントマン率いるバンドの評価を決定づけた4th。何かの映画で(確かアンダーザシルバーレイクだったと思う)トーキングヘッズを聴く奴はホモのカスだと虐められるシーンがあったような気がするが、労働者階級の出目でないアート気質の彼らはパンクを理解していないと反発にあうのはわかる気もする。

 

 

 

 

・49.NOT WONK/Down The Valley(2019)
Down the Valley(CD+DVD)(初回生産限定盤)

・苫小牧出身ロックバンドの3rd。直球なようでいて1曲目から捻りのあるアレンジをしており、聴き込まないと一筋縄ではいかない。現代邦楽ロックの数少ない実力あるバンドとして今後も応援していきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

・50.柴田聡子/スロー・イン(2020)
スロー・イン

・デビュー時の内省的な弾き語りから、作品を発表する度に独特の音楽世界を醸成していく女性SSWのEP。5th『がんばれ!メロディー』では陽的な曲が多かったが、このEPでは陰の気配を隠しきれていない気もする。ラストの「どうして」は不穏な歌詞に合わせてコーラスを効果的に用いた、彼女の代表曲になりうる美しい一曲。コーラスを取り入れる、というのは今年の新作『ぼちぼち銀河』でさらに洗練されていく。彼女の魅力としては、歌詞の譜割りが予測できないほど独特なのに加え、全盛期の小沢健二を彷彿とさせる情景描写にあると思う。日常を唄うSSWはいくらでもいるが、具体的描写を積み重ねて普遍的な人間の感情をシームレスに表現する手法は狙ってすぐできるようなものではない。個人的には現在もっとも注目している歌手のひとり。

 

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・以上です。後編はまた来週。

 

 

 

 

夏休み終了した

・職業柄、8/18(木)から24(水)まで連続した休暇を取ることになっていた。これは4月の申請時に自由に決められる。とはいっても業務に支障が出ない範囲内で、例えば月末や各期末期間は避けることが望ましいとされる。私は特に理由もなく8月に取ったが、漠然とした目論みはあった。春の時点ではそのころになれば少しは感染拡大も収まるだろうということと、昨年11月に取得した普通自動二輪免許を駆使し、南へツーリングでも行こうかと考えていたからだ。残念ながら現在進行形で感染者は増加する一方だし、自分のバイクすら購入していない。前者はともかく後者は完全に私の怠惰及び先延ばしの結果であり、一緒にツーリングしようと(口約束ですらないかもしれないが)言ってしまっていた友人には申し訳ないと思っている。すみませんでした。

 

・旅行先で映画を観るのが好きなので東京に行くことにした。1人なら食事に気を使わなくていいので楽である。

 

・8/20(土)の午後から出発。新幹線で東京まで行き山手線で秋葉原へ。『天使のいない12月』を買う。神宮外苑に死ぬほど人がいたのですぐ退散する。新宿のホテルで寝る。

 

・8/21(日)新宿のタイトーステーションポップンを2時間程度やる。池袋のブックオフに行き、『カルメンという名の女』『菊池成孔の欧米休憩タイム』を買う。

 

・15:10~下北沢トリウッドで『リズと青い鳥』を観る。

 

・この映画を最初に観たのは新宿ピカデリーだったが、たしか1週間後にもう一回ピカデリーで観て、3回目は長野グランドシネマズだったと思う。4回目は立川シネマシティだ(妹と一緒に行った)。BDが発売されてから劇場では観ていないので、おそらく今回は5回目だと思う。

 

・繰り返し観ていても意外と新しい発見があって面白い。傘木希美と鎧塚みぞれの位置は終始一貫して前後(希美が前を歩き、みぞれが後ろを行く)関係にあるが、それは(演出において)希美がみぞれをリードしている関係だと一般的には考える。しかしながら、希美は後ろをちらちらと振り返りはするがみぞれの顔を直視していないだろうと私には思われる。希美は全くみぞれのことを見ていない。今まで「図書館の本を人に貸したら又貸しになるんだけど」とみぞれが希美に言うシーンは二人が限りなく並列関係(並んで歩く)に近づいた唯一のものだと思っていたが、実際のところ希美はみぞれに向かって笑いかけてはおらず、ただ空間に向かって笑いかけているようにみえる。この映画で極めて感傷的なシーンの一つであるフルートの反射光がみぞれの身体を愛撫する場面についても、希美が見ているのはみぞれではなくフルートの反射光である。

 

・私はもちろん、これらの視線から希美はみぞれと(正面きって、あるいは目と目を見つめ合って)対話していないし、だからすれ違っているのだと言いたいわけではない。通常人間は四六時中互いの目を見て話をするわけではないだろうし、映画の対話シーンにおいては一般的にイマジナリーラインと呼ばれる線を想定し、カメラが交互に対象の顔を切り返し映すことによって相手に向かっているという場面を演出する。この映画についても生物準備室のみぞれと新山先生の対話シーンなどはそうだ。ここで目が合っているとか見つめているとかそういうことは問題にはならないだろう。しかしながら、希美とみぞれに至っては二人を映すカメラが(山田尚子の偏執的な仕事により)奇妙な位置にある関係で、イマジナリーライン上の切り返しショットのような安易な構図による二人の対話を許してはいないように思う。映画の終盤、生物準備室における二人の立合いは一見すると切り返しショットにみえるが、希美とみぞれの立ち位置が半身分横にずれているため、みぞれの視線のずれが強調されてしまっている。そのずれは大好きのハグで消滅するが、悲しいかな抱き合ってしまえば互いの顔を見ることはできない。

 

・希美はみぞれを(南中の吹奏楽部に勧誘した瞬間から)リードしていたつもりであったが、作劇の終盤でその状況は逆転するようになる。だが、最初っから希美はみぞれのことなんて見ていなかったんだと解釈するのはかなり希美を信じていないので、希美は『宇宙戦争』(2005)のトム・クルーズ演じるボンクラ親父と同じカテゴリの人間として捉えればいいのかなと思っている。希美もまた、何の因果か関わることになったみぞれをちゃんと見る(それは、みぞれのオーボエが好き、という言葉によって彼女を受け入れることと似ている)ことでみぞれから解放されるという、ボンクラ男が出てくる映画にありがちな構造をしているなと思った。具体的に何がとは言わないけど。

 

・横浜まで移動し、シネマ・ジャック&ベティにて『春のソナタ』と『夏物語』を続けて観る。

 

エリック・ロメール監督作品は初めて観たけれども、なるほど濱口竜介が絶賛するわけだなと感じた。端的に登場人物の会話が面白い。会話が面白いといってもいろいろあるだろうが、ある一つのトピックを縦方向に掘り下げる仕方には引き込まれるものがある。『春のソナタ』では首飾りのペンダントが重要なアイテムとなるが、親父が娘にプレゼントしようとしたそのアイテムの不在によって様々な憶測が生まれ、すれ違いを発生させることによって物語が進行していく。高等学校の哲学教師である主人公と娘の母親との会話もディテールがあり興味深い。カントのア・プリオリな分析判断とア・プリオリな総合判断を具体例を出して解説するとかいうシーンは普通ならカットされそうだが、『ママと娼婦』でのヌーヴェルヴァーグの申し子よろしく喋りまくっている。脚本がしっかりしていれば、物語に必要な素材というのは最小限で足りるということを実感できた。

 

・8/22(月)渋谷に行きツタヤで『ポゼッション』『カップルズ』『カンバセーション…盗聴』『旅芸人の記録』『打鐘~男たちの激情~』『タイムズ・スクエア』を借りる。これらは今週末までに宅急便で返却しなければならない。

 

・渋谷ユーロスペースで『みんなのヴァカンス』を観る。

 

・ギヨームブラックについては『女っ気なし』しか観てはいないが、前日のロメール『夏物語』から繋がりバカンスに出かける男の映画を連続して観ることになった。心地いい編集といくらか脱力できるジョークもあり観客も時々笑いながら鑑賞していた。ヒロインの一人がブロンドの女、というのは『夏物語』でもそうだったが、ロメールの方は男がギャルゲーの主人公ばりにモテまくるのであんまり現実味がない(男のキープで3人の女性と予定がブッキングして苦悩する辺りは現実味がある)。こっちはボンクラ男が3人でバカンスに出かける話なので安心して(安心して?)観れる。やはりボンクラ男がたくさん出てくる映画は最高。

 

・新幹線で帰る。個人的にはボンクラ男映画で一番良いのは『ビッグ・リボウスキ』だと思う。

 

・家に帰った。その後は借りてきた映画を観たり、ゲームしたり。『天使のいない12月』明日菜ルートでしか摂取できない年上のお姉さん成分というものはある。

 

・夏休み終了した。以上です。

 

 

davidkanderson/Goodbye 全歌詞



1.Dreaming
【instrumental】



2.Night
嫌なことばっかだね 君がそっとそこにいて
ああ 何もかもどうでもいいって夢の世界へ行く 死ぬってこんなの
星のある夜が好き 君とずっと見てたいって
ああ 生きてきたことがずっとコップに浮く雨みたい
今 生きえて消えそう



3.You're a boy and i'm a girl
【instrumental】



4.Springsong
夢を見てる 夢を見てる 草原に横たわってる
声を聞いてる 声を聞いてる あなたは私の声を聞く
今すぐにでも 空に飛んでく
ゆらゆら風に乗って 空に飛んでく



5.Train to moon
夢を見てる君の白い頬へ
夜空に隠れてキスをする
手紙を残して 僕は満月行きの列車に乗った
終着駅で僕は一人寂しく コンポタの缶を右手に握ってた
君の部屋の空いた窓から見える空で
星が流れてく



6.192
【instrumental】



7.Apart
【instrumental】



8.Intro
願い事が歩まずに滲んだ僕は鳥の音に
抱えして夜になると鳥の声が鳴りやまない
鳴りやまない



9.Alley
お母さんはやく帰りたいよ僕が生まれてくるために失われた様々なもの
車窓から見るさかさまの空赤い空夕立に囲まれて君と僕は雨宿りをする
神社公園の近くの神社豪華ホテル熱出てるほとんどの約束は果たされないままで
雨が止んだからうちに帰ろう同じのキャップを被った君を後ろから眺めてる
後ろから眺めてる空は何もなかったかのように晴れた午後のチャイムが鳴る
明日学校に行きたくない学校に行きたくないできればもう少し君といたい
しかし僕たちはまだ子供だから家に帰る眠りにつくと必ず白い人たちがやって来る
お母さんが隣で寝てる明日も辛いことがある幸せになるためには様々な試練を越えていく必要がある朝になるとすべてが白紙になっているけれど昨日と同じ君に会うことで昨日が続く朝の空気は胸を苦しくする泣きたい楽しいことより辛いことが起きるその確率の方が高いからもう帰りたいお母さんが作ってくれたお弁当が重たい帰りたいもう帰りたい早く帰りたいお母さん帰りたいよもう帰りたいよ

願い事は



10.World ⅱ
悲しいことが増えてくけど 大丈夫だ心配ないよ
僕はここで死んだふりだけ 
ああ 死んだら天国へ行けるかな
頑張るのだ そこから 誰しもが 友達



11.Existence is in the sunset
夕暮れの中で君は死んでいる
僕は存在している幽霊だ
彼らに殴られて倒れた付近は
そのまま陽が沈むのを待っていた
死にぞこないと凡人の忠告
セミの鳴き声神社の鐘の音
夢の中では僕は片足だ
現実では僕は両足だ
夢と現実の間が夕方だ
僕は存在している幽霊だ
今日も凡人の残骸の声で
陽が沈むのを遠くから見ていた
心臓に突き刺さったままのナイフ
彼らのキャンバス真っ赤に染まっていく
夢は絶望と希望の中絶だ
現実は無様な子供の死体だ



12.We was 4 & watched the fireworks
今晩は丁度いいくらいに涼しくてよかったわ
人混みは苦手だから君は裸でいる
人間以外の動物に生まれていたら
心臓が天井に干されている 観測した全ての事象
女の子は浴衣を着てる 汗をかく前に
生まれ変わったら 天使の鼻歌プラトニックスケール
何も言わない 何も言わない 休符ばかりでは音楽にならないわ
人間って全然面白くなくても死ぬのね

輝くために捨てられた青春 今から生える手に捕まらないように
助走を付けて飛んでみた 思いっきり思いっきり飛んでみた
はじめましてよろしくね 終わりましたさようなら
君への僕の感情だ 心臓の音ってこんなに大きかったっけ
人間以外の動物に生まれていたら僕は幸せになれるのかしら
芝生の上で猫が鳴いている もう何も喋ることが無くなってしまったわ
過去は黒色 未来は白色 バトンタッチのための人生
動物は死なない 僕は死ぬ どかーん!
最後にI love youって言いたかったわ



13.Goodnight
精神科の診断待ち 僕はこのまま死ぬ
青い空が窓から降る 平日の昼間の空気感
反復してく夏の影の 白い白い夢の中にいる
僕は地面に埋まってる

適当な駅で電車に乗る 僕はこのまま死ぬ
窓の風景と僕の風景と花火大会へと向かう人たち
星を見てる星を見てる 最終回に間に合わない
悲しいなら 悲しいなら
電車に轢かれる

精神科で君が見てる 夜になるとみんながいる
夜の夜の夜に吸い込まれて 夜空に埋め込まれた心臓
四つ打ちのリズムが鳴ってるね
暗い暗い僕の上にいるよ
精神科に君が来てる




(41:07)
※歌詞は聞き取りです。

davidkanderson/you are not alone  全歌詞

 




1.tomorrow
君と私ほど 僕は違う
帰る道で 空が落ちてくる

明日 また会える



2.nervousness
いる 僕らのいる
戻れない 5時のチャイム
遠い記憶のこと まだまだ わがまま

簡単なような 気持ちのような
本当は誰も信じたくないし
明日になれば大好きな人も大嫌いになりそうだわ

さよなら残して 一人だけ青春の影だね
制服の nervousness    
涙が出る 涙が出る

知る 僕らの知る
死んだら 僕の気持ち
郵便ポストに 届かない手紙を

難解なような存在のような
昨日の僕と 大人の嘘つき
忘れたことも雨上がりには
今にも泣きそうだわ

はじめての駅で 辛い事思い出すかな
もう少しの graduation
笑えるかな 笑えるかな

さよなら残して 一人だけ青春の影だね
制服の nervousness
忘れたかな 忘れたから



3.as human
校庭にいました 細長く伸びる影のなか
君を待ちました 夜が
真っ白な肌をして 青春を逃しました 僕は
さよなら言い残して 夏 過ごした
先生 真っ赤なUFO 右手で捕まえた日々と
電車に乗り過ごして 知らない街へ行く

校庭にいました 窓側の席から見えてる
夕方に吸い込まれて 君を見つけました
偶然 存在のダンス 知らない街へ行く僕ら
別れる道の前で 人間になりました

君を待ちました 細長く伸びる影のなか
風に揺らされて 夏が終わる

人間に生まれたわ 僕は 人間に生まれたわ
人間に生まれたら 僕は 見る 知る 居る 泣く 消える

人間で待っていたわ 人間で待っていたの僕は
人間で待っていたら僕は 死ぬ



4.you find me
【instrumental】



5.i find you
瞳のなかで泳いでいた潜水艦 ブルーな季節
死にそうな人の書いたとき ポッケから落ちた夢を
君の起こした夕暮れ 覚めるほどの
勇気を買った僕を迎えに来て 傘さし帰りに牛乳を買った牛乳が好き
泣いてしまったからよく分からなかったけど君の後ろで花火が上がっていたっけ
ごめん公園の影から不遜でいて 初デート南極へ行こう
死んだことがバレぬようにお花を置いてきた
こんな夜に見ていたの君も生きてるそんな夜でも ギリギリの僕で
倒れて生きている
冷静なフリして だけど知ってるかどうか
君がいたから普通になれそう やさしさで溺れて自由になりそうだ
なんだかnineteenの若さで 不意にねいたの
あともうひっそりと あともう少しの見本と
もうビリビリに破いた自意識のコラージュで
難解に飾られてるからに 聞くの
君の遠い4時半より浮かぶ 人差し指から抜いた半袖とその置いた手の甲
失恋程度 鈍感にしてる たくさんの僕たちの愛を(会える)
君を見つめてもいい思い出を作ろう 紅葉が赤い赤く染めにしてきて
脊髄から生えた夜が自然な大雨 地球を教えてきた先生が僕に気付いて
僕たちのために追いかけた 半身に翼生えていてそれで
宇宙にあるせつない歌つくり
忘れた そうか 失っていくの帰ろう

裸足で走って君の腕を捕まえる
校庭に咲いた花 かわいそうなくらい
寝ぼけ者のカリカチュアを少し踊る
美しい夏の夕陽の下 血まみれになった僕に見守られていた
風が吹いた動物が何匹か吠えていた 
その重みで人間が運んでいる空を味方につくった天使が地上で暮らすことにした
三階の窓から白いランプ すぐ来た人が手を引いていてさ
屋上この僕が丘にいるように死んでいった
魚が跳ねる死んでいる 自分は白い花だった
病院でも願っていたかった こんなこと悲しすぎた イドは死んでいる
好きな人と話しているときの心臓に翼が生えてたかもしれないよ
見かけた色人形に真っ赤に染まらないで 話を聞いてくれた
筒カラカラ持って 白い顔の空で
本当のすべてを 優しい現実の外より
挨拶ができるようになっていった
地上の太陽呪い 言葉を早まり
明日に向かって 君と土に雨中のなか
笑った
悲しいことがたくさんあるの
端っこで誰にも見つからないように生きていたらいつか
まだこれからは自分を捨てるために生きるの
生まれてから死ぬまでに
なんの思い出もなかったあの日の昨日も
まっすぐに歩いて 僕も
君もそうなのかな 見てゆくと
日が沈む 話したいこの思いも 無かった
無かった



6.tear tear
【instrumental】



7.geist
君が見つめられた僕はきっとブサイクだったか
こんな夜空にひとり残されたら悲しくなって
泣いていいだろ
lululu…
見つけて見つけて見つけて教えて
戻れなくなるまで一人にしないでよ
tututu…
誰の脳みそだって花が咲いてたよ
記憶をたどれば赤ちゃんになるよ
痛い暗い見つけられたら僕は
泣いていたの?
わからない
くだらない世界で走り出しちゃうよ
君のことばかり僕のことばかり
考えてたってわからなくなるから
tututu…
君が忘れていった love love love
僕が忘れていった love love love
とても死にたい死にたい死にたい死にたい
くだらない夜にブチ殺してくれよ
引き裂かれた身体いつまでたったって
泣いているんだよ
くだらない世界で走り出しちゃうよ
忘れてしまった帰れない僕は
今よりも君を知っている僕がいたのに
いたのに
ずっと一緒にいたいな

ずっと一緒にいたいな!
忘れていった love love love



8. f.i.r.e.w.o.r.k.s.
放課後最後に またね拍子つけて
きらきらきら
明日から僕は夏の隣にね
夕焼けときどき影に重なる
君には見えてる
夜には未熟さも分からなくなるから
夜には見えない

これからどこへ行くどこにでも行ける
君じゃないなら僕は一人ぼっち
言葉の奥から見つけてみてよ
見つけて世界 教えて世界
僕は僕で 君は君だったね
孤独だから好きなんて 恥ずかしくて夜に隠したの
思い出だって忘れていてあと思い出す
それでもいいかな
明日またgoodbye 君の声

浴衣で夏休み 花が光るね
かぎ一個できては 宙が一人ぼっち
死んだら僕らは知らない世界
知らない世界 知らない世界
僕はがっかり 生きてたっているのか 
不安になって 心臓がどこにあるのか
わからなくて なにもかもが無くて
悲しい感じだよ 君もそうなの
ねえ
君もそうなの?


  

(30:03)
※歌詞は聞き取りなので作者の意図に反していたり間違いの可能性があります。